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毎年7月3日は『なみだの日』

なみだの健康のカギを握る「マイボーム腺」って?

2023年に初の診療ガイドラインを策定

「マイボーム腺機能不全」についてメディアセミナーを開催

ドライアイ研究会(世話人代表:横井則彦 京都府立医科大学)は7月3日を『なみだの日』(日本記念日協会認定)と制定し、目の健康に重要な「涙(なみだ)」の正しい知識を伝える啓発活動を行っています。その一環として2023年6月21日、「マイボーム腺機能不全(MGD)」をテーマに、メディア向けのオンラインセミナーを開催しました。MGDは、目の健康を保つために油分を分泌する器官「マイボーム腺」に異常がみられる疾患です。同年2月、初めての診療ガイドラインがドライアイ研究会と日本角膜学会によって策定、発表されました。策定にかかわった東京慈恵医科大学眼科講師の田聖花先生と、お茶の水・井上眼科クリニック院長の天野史郎先生が、マイボーム腺の役割、MGDとドライアイの関連、症状、治療法などについて解説しました。

 

なお、涙の仕組みと大切さがわかる2023年度版の最新冊子が完成し、本ホームページからpdfデータで取得可能ですので、ぜひダウンロードして毎日の目の健康にお役立てください。

『なみだの日』ホームページ http://namida-labo.jp/

2023年版冊子{PDF}

■マイボーム腺の役割とマイボーム腺機能不全について(東京慈恵医科大学眼科 田聖花講師)

 

マイボーム腺はまぶたの裏側にあり、開口部から「マイバム」と呼ばれる油分を分泌する皮脂腺です。通常、皮脂腺は毛穴と一緒にあるのですが、マイボーム腺は「独立脂腺」と言って、毛穴とは別に存在しています。開口部はまつ毛の根もとのそばにあり、上まぶたには30~40個、下まぶたには20~30個並んでいます。マイバムは、まばたきの圧力によって押し出され、目の表面を薄く覆うことで、(1)涙の蒸発を防ぐ、(2)まぶたの縁から涙があふれ出るのを防ぐ、(3)まばたきの際、まぶたの潤滑油の役割をする、(4)目の表面における涙の広がりと安定性を増す、(5)目を閉じた時の上下のまぶたの隙間を埋める、(6)常在菌を減らし感染を防ぐ、などの役割を果たしています。

 

しかし、マイボーム腺の開口部に角化した皮膚や固まった脂質が詰まったり、マイバム自体の質が悪くなったりすることで、マイバムが出にくくなることがあります。これをマイボーム腺機能不全(MGD)といいます。MGDはさまざまな目の不快感を引き起こし、ドライアイの原因にもなります。

 

MGDの患者数は加齢とともに増え、欧米人よりもアジア人に患者が多いと言われていました。そこで国内では2010年にMGDの定義と診断基準が定められました。この中では、自覚症状があること、まぶたの縁に異常所見があること、マイボーム腺の開口部に閉塞所見があることを満たすとMGDとすると定められました。これをもとに国内での有病率の調査が行われた結果、症状があるMGDの人は全体の11.2%、症状はさほどないがまぶたの異常所見や開口部の閉塞所見がある人は74.5%に達しました。いずれもスペインで行われた先行調査より大幅に多く、日本人にMGDが多いことがわかりました。

 

2010年の診断基準をブラッシュアップする形で今年に策定されたのが、MGD診療ガイドラインです。このガイドラインはMindsという公益財団法人日本医療機能評価機構のEBM普及推進事業の方式に準拠した形式で作られています。この策定により、MGDのリスク因子、病態生理がさらに明らかになり、エビデンスに基づく治療が明確になりました。

 

ガイドラインが推奨する治療はホームケア、投薬、クリニック受診の3つの組み合わせとされています。ホームケアは温罨法、眼瞼清拭、オメガ3脂肪酸の内服。投薬はアジストマイシン点眼、ステロイド点眼、抗菌薬内服。クリニックではマイバムを押し出す治療、IPL、LipiFlowです。温罨法は目のまわりを温め、固くなったマイバムを液化させて排出させやすくする方法。眼瞼清拭は目のまわりをきれいに拭くことで、単純ですがエビデンスレベルの高い方法です。IPL、LipiFlowは眼科で使用する医療機器です。これらを患者さんの状態やご希望を鑑みて、組み合わせていくことになります。

 

ガイドラインが策定されたことで、また一定の効果がきちんと出る治療法が明確に示されました。また疫学的な研究もさらに進展すると思います。日常臨床にとっては非常に重要な成果だといえます。

■マイボーム腺機能不全とドライアイの関係性と治療法について(お茶の水・井上眼科クリニック 天野史郎院長)

 

本来、MGDはまぶたの疾患、ドライアイは涙液の異常であってまったく別物です。しかしドライアイはさまざまな原因で引き起こされる疾患で、MGDもその一つとなります。その理由はマイボーム腺が涙液の成分である脂質を分泌するからです。50歳以上の日本人の30~50%がMGDに罹患しており、ドライアイを引き起こすことで、QOV(Quality of Vision:視覚の質)、QOL(生活の質)を低下させることがわかっています。

 

ドライアイは水分減少タイプ、水濡れ低下タイプ、脂減少タイプの3種類に大別できます。水分減少タイプは文字通り涙液の水分が減るドライアイで、水濡れ低下タイプは涙液に含まれるムチンという成分の減少で起きるタイプ、そして油分の減少で起きるのが脂減少タイプです。MGDは脂減少タイプの原因となります。

 

MGDもマイバムの分泌が減るタイプと増えるタイプに分けられます。日本人のほとんどは分泌減少型です。分泌増加型は質の悪いマイバムが増えるものですが、日本では少なく病態もあまりわかっていません。

 

ガイドラインでは分泌減少型MGDの診断基準を2010年のものより簡略化し、自覚症状とまぶたの縁(眼瞼縁)や分泌物の異常が共にあれば、MGDと診断するとしたのが特徴の一つです。そして推奨する治療法は、田先生のお話にもあったように、ホームケア、投薬、クリニックでの施術の3本柱があり、中でも目を温める、きれいに洗うという2つのホームケアが基本です。目を温める「温罨法」は、ぬらしたタオルを電子レンジで蒸し、すぐに冷めないようにラップ等で包んでからまぶたに当てる方法が手軽でおすすめです。専用の商品も販売しています。1回5分程度を1日1、2回行います。MGDの治療は時間がかかることが多く、数カ月から数年、根気よく続けることが重要です。

 

目を温めた後は、マイボーム腺の開口部があるまつ毛の根もとを洗う「眼瞼清拭」を行うとより効果が高まります。滅菌済みのコットンで拭いたり、目にしみないアイシャンプーを使って指の腹でマッサージしながら洗ったりすることが勧められます。これも1日1、2回、歯を磨くのと同じように習慣化して継続することが大切です。

 

最近注目されている治療法の一つがIPL(Intence Pulsed Light)です。元は美容皮膚科で導入されてきた装置で、光を肌に照射してしみやそばかすを除去する治療に使われます。IPLを顔に行った患者さんはドライアイが改善する例が多い、ということが見つかり、まぶたの周囲に使用する応用法が生まれました。上下のまぶたに光を照射し、マイバムを柔らかくした後、まぶたを圧迫して排出します。温罨法や眼瞼清拭で効果がなかなか出ない方でも、効果が出ています。

■涙を増やすための7か条!!

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